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次世代アサルトライフルM2030

 アメリカ国防総省、小火器開発局と銃器メーカー、コルト社の共同により2020年より次世代のアサルトライフルM2030(仮称)の開発が進められてきた。アメリカ軍は2030年の正式採用を目指し、現在、最終的な環境別実射テストに入っている。

 M2030はカービンタイプのみが生産される予定である。アサルトライフルには通常のライフルサイズのほかに銃身やストックを短くしたカービンタイプのものがある。両者は状況によって使い分けられてきた。障害物の少ない砂漠などでの戦闘や遠距離射撃が必要な場面では、命中精度の高いライフルサイズが使われ、市街戦や密林などでは取り回しの利くカービンタイプが使われてきた。ライフルサイズは命中精度は高いが、全長が長いため、せまい場所では使いにくい、逆にカービンタイプは短いので室内や密林などのせまい場所では使いやすいが、命中精度に劣る。しかし、M2030はライフルピッチや弾頭の改良により、短い銃身でも従来のライフルサイズ並みの命中精度を持つことができ、遠距離撃にも十分対応できるようになった。そのため、通常のライフルサイズを生産する必要がなくなったのである。

 M2030の発射機構はマイクロロッキングシステムとガス圧直接利用方式を組み合わせた従来のM16シリーズを踏襲している。スタイルもフレーム上部にフラットトップレシーバー設けてモジュラーウェポンシステムを搭載できる仕様になっている。

 M16シリーズとの一番の違いは使用する弾丸だ。M16シリーズは5.56×45mm弾を使用していた。この弾丸はアサルトライフルの開発が迫られた1970年初頭、当時NTAOで使用していた7.62×51mm弾ではフルオート機能を備えたアサルトライフルには反動が強すぎて適していなかったため、新たに採用されたものだ。以来、約60年にわたり西側諸国ではこの弾丸を装填するアサルトライフルが開発されてきた。しかし、M2030は3.08×40mmの弾丸を使用する。これは火薬及び薬莢に使用する材質の技術向上により、従来の約2分の1の火薬量で5.56×45mm弾と同程度の威力を有する弾丸の開発に成功したためである。これによりM16と同サイズのマガジンに従来の2倍の数の弾丸が装填できるようになった。

 もう一つの違いは、M2030は多目的ランチャーと一体化していることだ。M16シリーズもハンドガード下部にM203グレネードランチャーやM26ショットガン等を装備することができた。しかし、これは単にアサルトライフルの下部にグレネードランチャーを取り付けただけであり、発射機構も引き金もそれぞれ独立して存在していた。M2030では発射機構こそ別になるが、引き金は1つであり、セレクトレバーの切り替えによって、それぞれを発射することができる。また、弾薬同様、技術向上によりランチャー弾自体も散弾銃と同サイズまで小型化された。そのため、ランチャー弾だけでなく、散弾銃としても対応できるようになっている。また、引き金の一体化によるスペースの確保により、ランチャー弾が薬室も含め4発まで装填できるようになった。

 M2030もM16シリーズ同様、様々なモジュラーウェポンシステムが用意されている。このモジュラーウェポンシステムにも改良が加えられた。従来、光学照準器、暗視装置、赤外線レーザー照準器などは電源を必要とし、それぞれのシステムに電池が内蔵されていた。M2030はショルダーストックに電池が内蔵されており、モジュラーウェポンシステムが本体のレシーバーに装着されると内蔵電池から電気が供給されるため、それぞれのモジュラーウェポンシステム自体には内蔵電池が必要なくなった。

 また、各モジュラーウェポンシステムの上面は太陽電池パネルでできており、太陽光のある場所では本体の内蔵電池を使用せずに稼動できるようになっている。モジュラーウェポンシステムを使用していないときには太陽電池パネルで作られた電気はストック内の内蔵電池に充電される仕組みになっている。さらに本体内部に小型タービンユニットが装備されており弾丸を発射するガス圧でタービンが回転し発電する。この電気も内蔵電池に充電される。M2030の内蔵電池はモジュラーウェポンシステムの太陽電池パネルとタービンユニットによる二重充電システムが採用されているのである。これにより内蔵電池は半永久的に使用することが可能になった。

 この次世代アサルトライフルの開発には日本の企業も技術提供している。本体の内蔵電池はパナソニック製である。この内臓電池はフル充電でスタンダードな昼夜兼用光学照準器を連続100時間使用することができる。ガス圧式タービンユニットは東大阪の有限会社大下製作所という中小企業が開発したものだ。モジュラーウェポンシステムに使用されている太陽電池パネルはパナソニックと輪島塗の漆器メーカー山野漆器の共同開発である。なぜ、太陽電池パネルに漆器メーカーが関係するのか、これは通常の太陽電池パネルの材質は反射しやすいため、遠方の敵からも発見される可能性が高く非常に危険である。太陽電池パネルの表面を特殊な漆で覆うことにより充電効率を損なうことなく、反射を防ぐことができるのだ。さらに、ハンドガード、グリップ、ストック、マガジンその他外装部分は旭化成が開発した、炭素繊維強化プラスチックP428でできており銃全体の軽量化に貢献している。M203グレネードランチャーをM4カービンに装備した場合、4840gになるが、M2030はスタンダードな昼夜兼用光学照準器を装備しても4020gにしかならない。その重量でもライフルの装弾数は従来の2倍、ランチャーの装弾数は4倍である。

 導入における問題点は従来の5.56×45mm弾が使えないことである。当然ながら全ての小火器を一度に入れ替えることは不可能である。そうなると同じ軍隊の中で弾薬の互換性がなくなってしまう、これは戦地では大きな問題となる。もう一つの問題点は価格である。価格はまだ公表されていないが、一丁当たり9000ドルになるともいわれている。これら二つの問題点が解決できれば、従来の西側諸国はM16系、東側・第三諸国はAK47系という世界の小火器配置分布は大きな変化を遂げるかもしれない。